旭川市の女子中学生が、今年の2月に自殺をほのめかして自宅を出たまま行方不明となり、翌月公園で凍死しているのが見つかりました。
警察の調べによると死因は低体温症とみられ、事件性はないとされていましたが、女子中学生が死に至るまでの経緯が、深刻ないじめによるものと「文春オンライン」の記事によって明るみとなりました。
いじめの経緯
いじめの始まりは女子中学生が旭川市立北星中学校1年生のころからとされ、いじめはエスカレートし、上級生グループに自身のわいせつな動画・画像の撮影を強要され、その画像をグループ間のSNSで拡散させるという凄惨かつ悪質なものだったことがわかっています。
この一連のいじめによって、精神的に追い詰められた女子中学生は、19年6月に市内の橋から飛び降りるという自殺未遂を起こしています。
幸い女児は命をとりとめ、北海道警旭川中央署の事情聴取により、いじめ行為や画像拡散の実態が明らかになりました。道警は加害生徒全員の事情徴収と事件を把握した上で、加害生徒への指導と、他生徒らに拡散した画像データの削除を学校側に要請しました。
しかし、驚くべきことに学校側は画像削除の対応も、加害生徒への指導も行わず、被害生徒の保護者や旭川市教育委員会に対し、「いじめの事実はなかった。男子生徒らのいたずらが過ぎただけ」「校長が中心となり、事件性はなにもない」との主張を繰り返しています。
この対応により、一度警察によって削除された被害生徒の写真は加害者によって復元され、再度拡散されるという事態に陥りました。
学校側の対応に絶望した被害生徒は9月に別の中学校に転校しますが、画像データの流出は止まらず、いじめのPTSDに苦しみ続けた被害生徒は新しい学校に通うこともできず、結果的に雪の積もる公園で凍死という痛ましい結末となりました。
変わらない学校の隠匿体質
旭川市立北星中学校の校長は、2020年3月に定年退職しており、今回のいじめに対してまともに取り合わず、「いたずら」で済まそうとしたのは、自身の着任中は事を荒立てず、穏便に済ませようとしたからではないか、と言われています。
真実はこれから明らかになるのかもしれませんが、6月にいじめの実態が明らかになった時点で、学校側が適切な対応をしていれば、これほどまでに被害生徒を苦しめ、追い詰めることはなかったでしょう。
今回のいじめの経緯も、被害生徒の親が北星中学校校長が何の対応も行わなかったことで、弁護士をたてて争う姿勢を示し、メディアによって取り上げられたことによって、明らかになりました。
そしてずっと校長からの「いじめの事実はなかった」で同じく通していた市教育委員会も、実態を知った市民からの300件以上の苦情や問い合わせの電話が相次いたことで、やっといじめの調査を行うと発表したのです。
つまり、メディアが取り上げなければこのまま闇に葬りさられるところだったのです。
同じ悲劇を繰り返さないために
しかし、学校のいじめ問題は基本的に加害者も被害者も未成年のため、殺人などよほどのケースでもない限り、触法少年の事件をメディアで取り上げられることはありません。
むしろメディアで取り上げられることで、被害者側の心理負担になることが多く、本来であれば学校と教育委員会で適切に処理をするべき事案でした。
内々のコミュニティで、事態が表ざたにならないのをいいことに隠匿に走った結果、大切な命が失われたことを重く受け止めていただき、同じことが二度とおこらないことを願わずにいられません。