時代遅れ?多くの小学校にある二宮金次郎像について

校庭や校舎の一角に設置されている二宮金次郎の像は、日本の小学校教育における象徴的な存在。
ところが、兵庫県三木市でこの像が一般競争入札で売却されるというニュースが報道され、時代の移り変わりを感じた親御さんも少なくないでしょう。
そもそも、二宮金次郎の像はどのような意味を持ち、なぜ多くの学校に設置されているのでしょうか?

 

二宮金次郎の生涯と業績

二宮金次郎(1787-1856)は、幕末期に活躍した農政家であり、経済思想家としても知られています。
彼の最も有名な功績は、貧困に苦しむ農村の再生と、効率的な農業技術の普及に尽力したこと。また、「報徳思想」と呼ばれる倫理観を提唱し、勤勉と倹約を重んじる生き方を広めました。

 

像の起源と普及

二宮金次郎の像が日本の小学校に普及した背景には、明治時代の国民道徳の形成があります。
明治政府は、国を近代化する過程で、国民に勤勉と忠誠を促すための象徴として、金次郎の姿を採用しました。彼の像は、本を読みながら薪を背負う姿で知られ、「読書薪取り」として親しまれています。学問への専念と労働の重要性を同時に象徴しており、子どもたちの模範とされたのです。
その後、大正時代から戦前にかけて、全国各地で有志による建立がブームとなりました。また、戦中は兵器の原料として供出されたとうい歴史もあります。

 

像が持つ教育的意義

二宮金次郎の像は、単なる装飾や記念物ではなく、教育的なメッセージを持つシンボルとなっています。像は子どもたちに対して、次のような価値を教えるためのものでもあるのです。

①勤勉

学問と労働を一心に行う姿勢は、成功への道とされています。

②自助努力

自らの力で困難を乗り越え、自立することの大切さを象徴しています。

③倫理と道徳

報徳思想に基づき、他者への貢献と社会全体の福祉の向上を図ることが強調されています。

 

現代における役割と評価

現代の教育現場においても、二宮金次郎の像は多くの学校で見ることができますが、その意義は時代と共に変化しています。
近年では学校統廃合や像自体の老朽化、教育方針にそぐわないなどの理由で姿を消しつつあります。別の場所に移設されたり、放置されたままのケースも少なくありません。
とはいえ、二宮金次郎の像が歴史的な教育資料であるのは事実。現代の日本の伝統的な価値観と教育のあり方を見直す契機として、また新たな議論の起点としての役割を果たしているのかもしれません。