学習性無力感 無気力な子どもをそだてないためにできること

学習性無力感 無気力な子どもをそだてないためにできること

学習性無力感とは、アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマンが1967年に発表した心理学理論です。今回はこの「学習性無力感」について、また子どもを「学習性無力感」にしないためにどうすれば良いのか、についてご紹介いたします。

学習性無力感とは

学習性無力感の実証実験として有名なのが、犬と電流を使った実験があります。

実験の手続きは以下の通りです。

犬2匹をそれぞれ、
1匹にはボタンを押すと電流が止まるしかけの部屋、
もう1匹には何をしても電流が止まらない部屋に入れる

とてもかわいそうな実験ですが、
電流が止まるしかけに入れられた犬は、電流ショックを繰り返すうちにボタンのしかけに気付き、電流が流れた瞬間にボタンを押すようになります。
もう一方の犬は最初は電流ショックに驚いたりしますが、何をしても止まらないので、そのうちに諦めてうずくまってしまいます。

また、上記の犬2匹を今度は、2匹とも部屋に設置されたしきりを飛び越えるだけで電流から逃れられる部屋に移動させます。
しかけ部屋にいた犬は、電流が流れたあと、しきりを飛び越えて難を逃れることを学習しますが、何をやっても止まらない部屋にいた犬は、何の行動も起こそうとはしなかったのです。

このように、「自分が何をやっても状況が変わらない」と学習してしまい、何の行動も起こさなくなることを「学習性無力感」と言います。

子どもが学習性無力感を感じる時

学習性無力感」は犬だけでなく、当然のことながら人間にも当てはまります。

子どもが何かこうしたい!と思うことがあっても、大人が横やりを入れて阻止したり、違うものをやらせようとする。
大人が自分の思うような結果を子どもが出せなかったときに、「お前はダメなやつだ」「どうして出来ないの」と非難したりする。
このように、何を言ってもやっても周りから否定され続けた場合に、子どもは学習性無力感に陥ってしまう可能性があります。

学習性無力感に陥った子どもは、素直に大人の言うことを聞くようになりますので、一見「いい子」であるように見えます。
しかし、それは「自分は何をしても無駄なんだ」と、自分で思考し行動することを全て諦めてしまったからなのです。

本当はこうしたい、と思っていてもそれができない、という状況は降り積もって子どもに多大なストレスを与えてしまいます。
その結果、うつになって引きこもりという事態になったり、思春期になって何もかもうまくいかないのは親のせいだ!といってストレスが爆発するケースも少なくありません。
その時になって「あんないい子がどうして…」とおっしゃる保護者の方がいますが、その「いい子」の状態は決して健全な状態ではなかったということです。

子どもを学習性無力感にしないために

子どもを学習性無力感にしないためには、自己肯定感を高めることです。

自分が行動した結果、良い結果がついてきた!という、自分が行動した先に良いことが起きる!という希望が持てるようにすることです。
それはどんな小さくて些細なことでもいいのです。何かやってみて、できた!という成功体験を積み重ねることが大事なのです。
そうすることで、始めは小さな挑戦でも、段々大きな課題に挑戦できるようになります。
そして例え挑戦の結果失敗したとしても、それまで積み上げた成功体験が、次はこうしたらうまく行くんじゃないか?と考えて再挑戦する気持ちの支えになってくれます。

また、自分が考え行動した先の結果が、自分によるものだと認識している子は、
例え失敗したとしても、他人のせいにはしたりしません。自分の努力や能力、やり方に問題があったのではないか?
という風に考えて、また工夫の上努力しようとするのです。

学習性無力感は育った環境によって後天的に身についてしまうもののため、誤りに気付いた時点でその学習を正すことも可能です。

子どもにこうあって欲しい、と思う気持ちばかりを押しつけていないか今一度振り返っていただき、ぜひ子どもの自主性を大切にしていただきたいと思います。